ラフな装いで山を目指した.

酸素濃度が地上の90%を下回っても積雪はみられず,駘蕩たる春光を感じる.身体はこれを求めていたのだ.

天へと衝き上げた巨岩に扇情的な木が足をかける.HDRを有効にすると雲は立体感を増し,西日の威厳に磨きがかかる.宗教画みたい.

苔や野鳥を眺めながらいろいろなことを考えた.

東京都渋谷区南平台の角の整形地二百坪を手に入れたいとか,千羽鶴を折ったり血液クレンジングをする人間の人生とか,90年代の夢も希望もあるインターネットのこととか.

締め付けられていた思考が開放されて限りなく広がろうとする.神経細胞の都市が魅せる夢が現実を取り込もうとする.部分と全体が一致してしまう……危ない.

そんなことよりみてよ.イシヅチサンショウウオの幼生だ.かわいいね.

これくらいの情緒をさ,収穫して,齧りついて,咀嚼して,嚥下するくらいの暮らしをおくりたいな.